法人成りのメリットとデメリット(その①)

2025.06.24


法人成りとは?


法人成りとは、個人事業者が会社を設立して、それまで行っていた個人事業をその会社に移すこと
をいいます。  


法人成りのハードルは意外と低い


会社設立というと、ハードルが高そうに聞こえますが、実はそこまで難しいことではありません。

会社を設立するには、以前は資本金が株式会社の場合は最低1,000万円、有限会社の場合は最低300万円が必要でしたが、今は資本金0円でも設立できますので、法人成りのハードルはかなり低くなりました。

ただし、実務上は資本金0円で会社を設立することはほとんどありません。中小企業の場合、設立時の資本金は100万円~300万円くらいを目安にするといいと思います。  


法人成りすることで得られるメリット


法人成りの主なメリットとしては、次のようなものが挙げられます。


① 自分に対する給与が経費になる


個人事業の場合、事業主は事業と同一視されるので、事業主である自分に給与を支給するという考え方自体がありません。

これに対して、法人の場合、事業主はその会社の役員となり、会社から役員報酬を受け取ります。役員報酬は、会社の法人税を計算する上で経費(損金)にできます。

また、役員個人の視点から見ると、役員報酬は給与所得となり所得税の課税対象となりますが、給与所得の計算上「給与所得控除」の適用を受けることができます。さらに、家族に給与を支給する場合は、支給額が一定額以下であれば、配偶者控除や扶養控除の対象とすることもできます。

このように、自分や家族に対して給与を支給することで、法人税と所得税の両方で課税所得を圧縮できるというメリットがあります。  


② 自分や家族従業員に対する退職金が経費になる


個人事業の場合、仮に自分に退職金を払ったとしても、経費になりません。また、同一生計親族に対する退職金も同様に経費になりません。

これに対して、法人の場合、自分や同一生計親族に支給する退職金は、法人税の計算上会社の経費にすることができます。

また、退職金を受け取った個人の視点からみると、退職金は所得税の計算上「退職所得」として扱われます。退職所得は、一定の条件のもと税負担を1/2に軽減する仕組みとなっていて、税制面でかなり優遇されています。


このように、自分や家族従業員に対して退職金を支給することで、法人税と所得税の両方で節税効果が期待できます 


③ 2年間は消費税を払わなくて済む


法人成りをした場合、基本的に2年間は消費税の免税事業者になることができます。 飲食業や個人向けサービス業などのBtoCビジネスの場合は、インボイス登録をするメリットはあまりありません。このような方の場合は、免税事業者になることで法人成りから2年間は消費税を納税しなくて済みます

ただし、設立時の資本金が1,000万円以上の場合やインボイス登録をした場合など、一定の場合には2年を待たずに消費税の課税事業者になるので注意が必要です。

また、法人成りに伴って設備投資を行うような場合は、あえて課税事業者を選択することで消費税の還付を受けられることもあるので、慎重に検討する必要があります。

消費税は届出ひとつで納税額が大きく変わる税金です。設立時に課税事業者と免税事業者のどちらでスタートするのか、しっかりとした検討が必要になります。  


④ 青色欠損金の繰越期間が長い


青色欠損金とは、簡単にいうと過去の赤字のことです。所得税や法人税には、過去の赤字を繰り越して、将来の黒字と相殺できる制度があります。その繰越しができる期間が、個人事業の場合は3年までとなっていますが、法人の場合は10年までとなっています。

個人事業の場合は3年で損失が切り捨てられてしまいますが、法人は10年スパンで経営を考えることができるので、大きなメリットであるといえます。  


⑤ 自分と家族の社会保険料


個人事業者が加入する公的保険は、原則「国民年金+国民健康保険(国保)」ですが、法人の場合は社長であってもサラリーマンと同じように「厚生年金+健康保険(社保)」に切り替わります。


国保と社保の主な違いとしては、次の点が挙げられます。

✓  国保は加入者の所得などに応じて保険料を計算するが、社保は役員報酬額に応じて保険料を計算する。

✓  国保には扶養の制度はないが、社保には扶養の制度があり、条件を満たせば配偶者や子どもを社会保険の扶養に入れることができる。  


法人成りをすることで、適切な役員報酬の設定や家族を扶養に入れるなど、国保と社保の制度の違いを活用して社会保険料の負担を減らすことができるというメリットがあります。  


⑥ その他の違い


その他にも、法人限定の節税対策として役員社宅、出張日当や法人向け生命保険の活用などがあります。

また、減価償却、税率や決算月の設定などにも個人事業と法人とで違いがあり、法人成りすることでメリットになることがあります。


これらについては、また別の機会に紹介したいと思います。  


次回は、「法人成りのデメリット」について取り上げます。

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