生前贈与で相続税対策(その①)
「生前贈与」とは?
生前贈与とは、生前のうちに株や現金などの財産を相続人等に贈与しておくことをいい、相続税対策として有効な方法の一つです。
生前のうちに財産を贈与しておくことで、将来相続が起こったときに相続税の対象となる財産が贈与をした分だけ減ることになるため、相続税の節税に繋がります。
生前贈与の方法には、「暦年課税による贈与」と「相続時精算課税による贈与」の2つの方法があります。
「暦年課税による贈与」とは?
暦年課税とは、年110万円までの贈与であれば贈与税が非課税になる贈与方法です。
年110万円までの贈与なら税務署への申告は不要ですが、年110万円を超える場合は申告が必要になります。
なお、申告が不要な場合であっても、贈与契約書を作成しておいたり、振込みで贈与を行うなど、客観的に贈与の事実を証明できるようにしておくことが重要です。
贈与した方が亡くなった場合
暦年課税で贈与をしていた方が亡くなったときは、相続開始前7年以内に贈与をした財産が相続財産に持ち戻され、相続税の課税対象となってしまいます。(生前贈与加算)
ただし、贈与を受けていた方が相続や遺贈で財産を取得しなかった場合は、その方については持ち戻しの対象外となります。
少し分かりにくいので、例を挙げます。
①【子】に贈与するケース
・2023年 父Aは子Bに暦年課税で110万円を贈与した。
・2024年 父Aは子Bに暦年課税で110万円を贈与した。
・2025年 父Aが亡くなった。子Bは父Aから相続で財産を取得した。
この場合、2023年と2024年の贈与は、いずれも年110万円までの贈与なので贈与税は非課税となります。
しかし、いずれの贈与も「父Aが亡くなる前7年以内にされた贈与」なので、220万円(110万円+110万円)は相続税の計算に持ち戻され、相続税の課税対象となってしまいます。
せっかく将来の相続税対策のために贈与をしていたのに、結局相続税が課税されてしまうので、節税効果は得られないことになります。
②【孫】に贈与するケース
・2023年 祖父Aは孫Cに暦年課税で110万円を贈与した。
・2024年 祖父Aは孫Cに暦年課税で110万円を贈与した。
・2025年 祖父Aが亡くなった。孫Cは祖父Aの相続人ではなく、また、遺贈によっても財産を取得しなかった。
この場合、2023年と2024年の贈与は、いずれも年110万円までの贈与なので贈与税が非課税となります。
また、いずれの贈与も「祖父Aが亡くなる前7年以内にされた贈与」ですが、孫Cは祖父Aから相続や遺贈で財産を取得していないので、220万円は相続税の計算に持ち戻されず、相続税も非課税となります。
したがって、孫Cに贈与をした220万円は贈与税も相続税もかからないため、節税効果が得られることになります。
令和5年度の税制改正で相続時精算課税制度の使い勝手が向上したことにより同制度が注目を集めていますが、上記②のケースなど、暦年課税による贈与が有効な相続税対策となる場面もあります。
次回は、もう一つの贈与の方法である「相続時精算課税制度」について取り上げます。